政府支出乗数_01_乗数と波及効果
前回までの45度線分析の話では、どのようにGDPが決定されるのかを考察しました。
その過程で、消費や貯蓄がどのように決定されるかを勉強し、さらにインフレやデフレに対する政府の対応も考えてみました。
今回は政府支出乗数について勉強します。
「乗数」とは、簡単にいうと「何倍になるか?」ということです。
たとえば、政府が景気を刺激するために、政府支出を増やすことを計画しているとします。
ただ、政府支出を1兆円増やしたときに、具体的にどれくらいGDPを増やす効果があるのかが説明できなければ、実際に政策を実行に移すことは難しいでしょう。
政府の学者が計算して、仮に政府支出を1兆円増やすと、GDPを4兆円増やすことができる!と分かったとします。このとき、「乗数」は「4」です。
1兆円のコストが4倍のメリットになっているので、4倍、ということになります。
でも、どうしてコスト以上にGDPの増加分が大きくなったりするのでしょうか?(4倍、というのはあくまでたとえ話ですが)
どうして1兆円の政府支出は1兆円のGDP増加ではないのでしょうか?
おさらい
まずは今までおさらいから始めます。
マクロ経済学でもっとも重要な式は、
Y = C + I + G + X - M
GDP=消費+投資+政府支出+輸出ー輸入
でした。
また、この式に含まれているC(消費)を決定する式は、
C = C0 + c( Y - T )
消費=基礎消費+限界消費性向(所得ー税金)
です。
波及効果
いま、仮に政府が政府支出(G)を増やすとします。
『Y = C + I + G + X - M』の「G」が増えると、左辺の「Y」も同じ分だけ増加します。(右辺=左辺なので、片方が増えたら、もう片方も増えます)
増えた「Y」は、消費にも影響します。
『C = C0 + c( Y - T )』の式のなかには「Y」が含まれているからです。右辺の「Y」が増加すると今度は左辺「C」が増加します。
すると、こんどはさっきの『Y = C + I + G + X - M』のなかにある「C」が増加したことになります。右辺「C」が増加するということは左辺の「Y」が増加するということです。
そうするとまた、『C = C0 + c( Y - T )』の式の「Y」が増えて、左辺の「C」が増加し、
またまた『Y = C + I + G + X - M』のなかにある「C」が増加したことになります。右辺「C」が増加するということは左辺の「Y」が増加する・・・・以下ループです。
政府支出の増加が、ぐるぐるぐるぐる巡って、GDP(Y)を押し上げていきます。
こういう現象は一般に「波及効果」と呼ばれています。
政府支出が増えて、世の中に出回っているお金が増えると、それは誰かの収入になって、誰かの消費に使われます。
誰かの消費は、また他の誰かの収入になって、それがまた消費に使われます。
誰かの消費は、また他の誰かの収入になって、それがまた消費に使われます・・・・
実際に政府が支払った金額は、このように巡って巡って全体の所得(GDP)を増やしていくのです。
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