均衡予算乗数
前回までに、政府が行う財政政策とその効果について考えてみました。
財政政策とは、景気を刺激し、GDPを押し上げるために、政府が行う政策のことでした。これには、大きく2つの方法があります。
「政府支出の拡大」と「減税」です。
世の中に出回るお金をの量を増やすためには、政府が世の中にお金を注入するか、世の中から回収するお金(税金)を減らすか、のどちらかになります。
しかしながら、財政政策には注意しなければならない問題があります。政府がお金をたくさん使ったり、税金を減らすと借金が増えてしまうのです。
では、うまいこと借金をせずにGDPを押し上げることはできないのでしょうか?
誰かが言いました。
「政府支出を増やす分、増税して財源を確保すればいいじゃないか!」
たしかに、政府支出の拡大と増税を同額分行えば、プラマイゼロ。借金はしなくても済みます。借金をしない財政政策は、果たしてうまくいくのでしょうか。
均衡予算乗数
おさらいから。
- 政府の支出(政府支出)は「G」
- 政府の収入(税金)は「T」
で表されます。
マクロ経済の均衡式は
Y = C + I + G + X - M
でした。
また、この式に含まれているC(消費)を決定する式は、
C = C0 + c( Y - T )
消費=基礎消費+限界消費性向(所得ー税金)
です。
2つの式を巡りながら、Y(GDP)が増えていく、これを波及効果といいました。
今回は、政府支出「G」を増やすと同時に、借金しないために同額の増税「T増加」を行います。
すると、こんな風になります。
まず増加した「G」の分だけ、GDP「Y」が増加しました。
増えた「Y」は消費を活性化させようとしますが、ここで増税がそれを打ち消してしまいます。
使えるお金が人々に回るのと同じ分、増税によって使えるお金が減ってしまったのです。
したがって、消費は増えず、波及効果は止まってしまいます。
政府支出によって増えたGDPは、ちょうどその政府支出と同額です。
このように、同額の政府支出の拡大と増税を行うと、借金はうまれませんが、波及効果もなくなってしまいます。
このとき乗数は「1」になります。
借金しないように、予算を均衡させているので、「均衡予算乗数」といいます。
均衡予算乗数は「1」です。
アクセルとブレーキを同時に踏んでいるようなものですね。
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